ゲームの攻略本やWEBサイト制作において、画面写真はなくてはならない存在です。ゲームの雰囲気が伝わりやすいこともありますし、見た目も華やか。しかし何より重要なのは、文字だけで表現するのが難しい場面でも、写真が1枚あるだけで、格段にわかりやすくなるからです。
パソコンやスマートフォンで手軽に動画配信が可能になった現在は、誰でもゲームのスクリーンショットを簡単に撮影できますが、昔はさまざまな機材を使って悪戦苦闘しながら撮影をしていました。
今回は「たった5分で振り返るゲーム画面撮影の歴史」と題し、昔はどのように画面写真を撮影していたか、ゲーム機の移り変わりとともに振り返ってみます。
なお、今回は出版社の立場で撮影に関わった経験を元にしています。メーカーと出版社では事情も異なりますし、出版社によっても導入した機材等によって多少の違いはありますので、そのあたりはご了承ください。
1983年に任天堂のファミリーコンピュータが登場してしばらくのこと、あとを追うようにしてゲーム情報誌やゲーム攻略本が発売されました。それらの雑誌や本を制作する際、編集者たちがもっとも苦労したと思われるのが、画面写真の撮影でした。
現在のように便利な機材はなく、そもそもパソコンとテレビゲームをつなぐことすらできない状況です。そうなると撮影手段はひとつしかありません。テレビに映ったゲームの画面を、直接カメラで撮影するのです。
社内の一室を光がまったく入らない状態にして、そのなかでゲームをプレイしながら、必要な場面を1枚ずつ撮影していくのは、正に体力勝負でした。
アクションゲームなど動きのある写真であってもほぼ一発勝負。失敗すればスタートからやり直しですが、当時はセーブ機能もなく、あってもパスワード程度です。攻略が難しいポイントでは何度も撮り直しを行い、撮影が終わる頃にはプレイヤーも編集者もカメラマンも疲労困憊というありさまでした。
もちろんアナログカメラですから、フィルムを現像する手間が必要で時間もかかり、写真の出来不出来がその場で確認しづらいのも不便な点でした。
ちなみに当時すでにビデオプレーヤーはありましたが、市販レベルではまだまだ画質が悪く、録画した画面を撮影することは見送られていました。
そんなアナログな時代に新風を吹き込んだのが、昇華型プリンターの登場です。プリンター本体とゲーム機をつなぎ、ゲーム画面を直接プリントアウトしてくれる機材で、画質にも優れていました。
プレイヤー自身が自分のタイミングで撮影することが可能となり、カメラマンの必要がなくなる。さらにはネガを紙焼きにする手順がなく、即座にカットを確認できるなど、この機材を導入して救われた編集者やプレイヤーは数多いと思われます。
ちなみにビデオプレーヤーの画質はかなりあがってきましたが、それでも市販用はまだまだ厳しいものがありました。いわゆる次世代機が登場する1990年代の終わり頃、ようやく比較的手軽な業務用が登場し、録画による撮影が可能になるのです。
1998年、いわゆる次世代機と呼ばれるゲーム機が登場した頃、ようやく「DVCAM」という業務用規格のビデオプレーヤーが登場しました。これとゲーム機をS端子で接続してゲームプレイを録画し、それをパソコンと接続して静止画を切り出すといった流れで撮影を進めることができるようになります。
撮影媒体がテープであるため場面の頭出しをするには延々と早送りをする必要があり、何分ごろに何を撮影していたかメモをとっておかないと撮影したい場面を見つけ出すのにも苦労したのは、今となってはいい思い出です。
また、ゲーム機自体もセーブデータを多く残すことができなかったため、メモリーカードをたくさん用意して撮影したい場面にあったセーブデータを探し出すといった苦労もありました。
それでも録画で撮影ができるようになったのは大きな進歩といえますし、飛躍的に作業は軽減化されたのです。
2000年には「プレイステーション 2」が発売され、ゲーム機の世代交代が一気に進みますが、撮影機材は「DVCAM」がまだ主流で、家庭でも録画といえばビデオプレーヤーが普通という時代でした。
しかし「プレイステーション 2」の発売をきっかけにDVDが爆発的に普及しはじめます。DVD+HDDレコーダーが発売されはじめたのもこの頃です。また、パソコンでもキャプチャーボードが多数発売され、徐々にですが時代はアナログメディアからデジタルメディアへと移り変わっていきます。
画面写真の撮影で大きな転機になったのは、2003年にアースソフトというメーカーから「PV」というキャプチャーボードが発売されたことです。「PV」は推奨動作環境がPentium3+メモリ128Mほどと手軽で、HDDに直接動画を記録できて、画質も鮮明なのは画期的でした。
ただしパソコンに録画した動画はファイルサイズが非常に大きく、「DVCAM」のように2~3時間分を一気に録画するのは費用的にも物理的にも無理がありました。そこでロールプレイングゲームのような長時間に渡ってさまざまな場面を残しておきたいゲームでは「DVCAM」、対戦格闘ゲームやアクションゲームでは「PV」というように、しばらくは併用が続いていました。
しかし、2005年あたりになるとパソコンのスペックが上昇し、HDDの容量も増加、D端子を搭載した「PV2」が発売されたことから、この問題も無事に解消。パソコンでほぼすべての撮影ができるようになったのです。
2006年にブルーレイが搭載された「プレイステーション 3」が発売されるとゲーム機の画質が一気に向上し、フルHD(1080P)が当たり前の時代になりました。
ゲーム機を接続する端子も進化し、この頃はほぼ劣化せずに信号を伝えられるHDMIで接続していましたが、HDMIの信号にはDHCPというコピーガードがかかっており、キャプチャーボードにそのまま接続しても撮影するのが難しい状況でした。そのため、多少画質は落ちますが、HDCP信号が含まれないD端子で「PV3」と接続して撮影していました。
また、画質がフルHDになったことにより動画のファイルサイズが膨大になり、アクションゲームなどではHDDやCPUの性能が追いつかず動画がコマ落ちしてしまうということも多かったため、解像度をフルHD画質(1920×1080)からDVD画質(720×480)に落として撮影することも多々ありました。
なお、動画をエンコードしながら撮影し、CPUやHDDに負担を変えないハードウェアエンコードという撮影機もありましたが、こちらは場面によっては画像がぼやけることがあったため、攻略本の画面写真撮影には向いていませんでした。
近年では動画配信サービスのYoutubeやニコニコ動画の流行にあわせてさまざまなキャプチャーボードが発売され、家庭でも手軽に動画を録画することが可能になりました。
2014年に発売された「プレイステーション 4」には、本体自体に動画撮影機能やスクリーンショット機能が搭載され、ゲーム機単独で撮影することができます。
しかも「プレイステーション 4」は動画配信をするためにHDCPをオフにできる機能が搭載され、HDMI端子のついたキャプチャーボードでの撮影も容易です。HDDの容量も3TBなどが当たり前になり、ロールプレイングゲームなどは最初から最後までプレイ動画を残しておくといったことも簡単にでき、撮影はずいぶん楽に行えるようになりました。
また、ハードウェアエンコードで撮影する撮影機の性能もあがり、手のひらサイズの小さい機械でもきれいな画質での撮影が可能です。
以上が大まかではありますが、ゲームの画面写真の撮影の歴史です。今でこそ誰でも手軽に撮影や動画配信などができますが、昔は高い業務用のテープを使い、撮影自体にも相当な時間をかけるなど、制作者たちの並々ならぬ苦労があったというわけです。
画面写真はゲームの説明をフォローすることが目的ですが、ときには読者にクスッとしてもらえるような、誌面の息抜きとなるおもしろい写真を撮ることもあります。攻略本などを手に取っていただく際は、画面写真にも注目していただけると幸いです。
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