いわゆるデザイナーという職業がありますが、一口にデザイナーと言ってもさまざまな分野があります。衣服のデザインをするファッションデザイナーや自動車などの工業用品をデザインするインダストリアルデザイナーなどはすぐに思い浮かぶところでしょう。
ちなみに当社はWebや書籍を制作している会社ですから、WebサイトをデザインするWebデザイナー、誌面をデザインするエディトリアルデザイナーが多く在席しています。しかし、なかには前職で空間デザインを手掛けていたという、当社ではちょっと変わり種のスタッフもいます。
今回はこの空間デザインについて、当社がかつて出展したイベントブースを例にとり、少し紹介してみましょう。
空間デザインとは、その名のとおり「空間」をデザインすること。空間デザイナーは店舗やホテルのロビー、イベントや美術館などの空間を、コンセプトにあわせてデザインするのが仕事です。
インテリアデザイナーと似ていますが、インテリアデザイナーの場合はすでに完成している空間にあわせて装飾品や照明などをコーディネイトするという仕事で、一方の空間デザイナーはスペースそのものから自分でデザインするため、より自由度が高く、その分ハードルは高いといえるでしょう。
当社もゲームイベントのお手伝い等でブースに飾る装飾品などを制作することは多々ありますが、さすがにスペースそのものをイチからデザインする仕事はめったにありません。それはやはり施工会社やイベント専門の会社があるからです。ところがあるとき、先ほどの空間デザインの経験者が、その技術を活かす機会に恵まれました。それが「コンテンツ東京」です。
「コンテンツ東京」とは、毎年ビッグサイトで開催されるメディア、エンターテイメントや企業の宣伝・マーケティングの関係者のための商談会です。コンテンツ制作、映像・CG制作・広告デザイン・ブランディング、権利・IT・最先端デジタルテクノロジーなど幅広い企業が出展して行われます。
当社ではゲームに関連するWEBシステムや映像の販路拡大を目的として出展したのですが、初めて参加した2016年は手作り感満載のブース。それはそれで悪くなかったのですが、やはり次は本格的な形も試してみようということで、翌年は施工会社にも入ってもらってブース設営を行いました。
※当時の出展内容については過去記事にレポートがあります。
「コンテンツ東京2017」奮戦記〜映像・CG制作展に出展します!
「コンテンツ東京2017 映像・CG制作展」出展レポート
さて、実際にどういう具合に出展ブースを作り上げていったのか、まずは簡単な流れをご紹介します。実際には各過程においてもさまざまな調整や検討が入ってきますし、費用概算はほぼ同時進行となりますので、あくまでざっくりしたイメージです。
① コンセプト決定
↓
② 課題の抽出
↓
③ 平面図作成
↓
④ 3Dイメージ作成
↓
⑤ 細部の調整、費用見積
↓
⑥ ブースの仕様決定
とりわけ重要なのが②課題の抽出です。決定したコンセプトをもとに、どのようなブースにするのか大枠を固めていく作業でもあります。
最低でもゾーニング(用途や目的に合わせたスペース配分)、備品・展示物等の要素出し、動線計画などはほぼ確定させる必要があり、ここが固まらないと③平面図作成に進めることができません。
なお、要素出しはともかく、ゾーニングや動線計画はブース設営の経験がないと難しいところなので、ここからは空間デザイナーが中心となって進めていく必要があるでしょう。
たとえばデモ用のモニターひとつをとっても、目に入りやすい場所はどこか、視聴する人が集まったときにブース内が混雑しないか、考慮する点がいろいろとあります。また、商談スペースでは応接セットを何組にするのか、イスの位置は座りやすいか等もチェックポイントです。
平面図が固まったところで、3Dモデリング用ソフトでイメージ画を作成します。この段階ではデザインの方向性を確定させると同時に、「高さ」という条件について検討する必要が出てきます。
壁や床の色、照明、モニターやパネルの位置など、詰めるべき点は多々あります。特にモニターやパネルは通行人の目の高さに合わせるのが一般的ですが、混雑が予想されるところでは上方に配置するなどの工夫が必要かもしれません。自社ブースだけでなく隣接するブースについて考慮することもときには必要となります。不明な点があれば主催会社や施工会社に都度、相談や確認をすると間違いありません。
こうして関係者内で展示ブースのイメージを共有し、さらに修正箇所や調整などを話し合って3Dモデリング上でもブラッシュアップしていきます。
この過程で、部分的に1分の1スケールのモックアップも作成して、訴求内容の視認性などを実際の目と距離で確認するといったことも行います。これにより施工に入るまでに、より具体的に完成図のイメージが共有できるわけです。
そして、さらなる調整を経て、最後に仕様決定となります。
いかがでしたでしょうか。普段はWEBや書籍のデザインをしている当社デザイナーですが、実はこんなスキルもありますよというご紹介でした。
もし、イベントや空間デザインでお困りごとがありましたら、一度お声掛けいただければ幸いです。
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