ゲーム障害について調べてみた

思わずシェアしたくなる話
2019.07.30

 モバイルゲームを中心として、市場拡大の一途を辿るゲーム業界。eスポーツやゲームのストリーミング配信といった話題もあり、2019年もさらなる期待ができそうですが、一方で向き合わなければならない問題も出てきています。
 そのひとつが、いわゆる「ゲーム障害」です。

そもそもの発端

 今年の5月のことですが、WHO(世界保健機関)が、ゲーム障害を新たに治療対象の疾患として認定しました。日々の生活を楽しくしてくれるはずのゲームで、逆に人生を台無しにしてしまっては本末転倒。しかし、これに対してアメリカのビデオゲームの業界団体ESA(エンターテインメントソフトウェア協会)は、ビデオゲームには中毒性などない、鬱病などの精神疾患と同列で扱われるべきではないとして、見直しを求める反対声明を発表しています。
 確かにゲーム業界としては由々しき問題です。ただ、その一方でオンラインゲームでの廃人やゲーム課金を止められないという話も、ニュースで話題になることがあります。

 現在、「ゲーム障害」という言葉のインパクトが強すぎるせいか、イメージだけが独り歩きしてしまい、その実態がどんなものなのかしっかり理解されていない印象があります。例えば「ゲーム障害が病気ならば、一日中モニターに向かってPCで業務をするサラリーマンは、皆仕事障害なのではないか!?」といった類の意見をSNS上で見かけることがあります。気持ちはわからないではないですが、もちろんこれはまったくもって正しくありません。
 そこで関連する情報について、いま一度おさらいし、きちんと理解を深めておきましょう。

ゲーム障害の定義

 ゲーム障害が提起され、しばしば報道もなされているものの、媒体や場面によってどうにも捉え方が曖昧に感じます。日本の行政機関などで公開されている文書等でも、ゲーム障害の定義については今のところ見当たらないようです。WHOでもまだ発表がなされたばかりであり、かつ実際の施行は2022年からなので、対応はこれから段階的にといったところなのでしょうか。
 先に述べたWHOではゲーム障害を以下のように定義しています。

“1.impaired control over gaming (e.g., onset, frequency, intensity, duration, termination, context);
2.increasing priority given to gaming to the extent that gaming takes precedence over other life interests and daily activities; and
3.continuation or escalation of gaming despite the occurrence of negative consequences. The behaviour pattern is of sufficient severity to result in significant impairment in personal, family, social, educational, occupational or other important areas of functioning.The pattern of gaming behaviour may be continuous or episodic and recurrent. The gaming behaviour and other features are normally evident over a period of at least 12 months in order for a diagnosis to be assigned, although the required duration may be shortened if all diagnostic requirements are met and symptoms are severe.“
『ICD-11 – Mortality and Morbidity Statistics』
(https://icd.who.int/browse11/l-m/en#/http://id.who.int/icd/entity/1448597234)


1 ゲームをしたい欲求を抑えられない
2 ゲームをすることを他の日常生活の活動よりも優先してしまう
3 個人、家族、社会、仕事、学習などに重大な問題が生じていてもゲームをやめることができない
症状の重さによって期間は増減するが、以上の症状が12カ月以上続いた場合、ゲーム障害と診断される。

 簡単にまとめると、「ゲーム障害とは、ゲームにのめり込むことで日常生活に支障をきたし、それが慢性化している状態」といえるでしょう。ゲーム中毒、ゲーム依存症と呼ばれる所以です。

ゲーム好きとゲーム障害の違いとは?

 ただ、その定義だけ見ても、実は正確に理解することは難しいといえます。なかには「あれ、もしかして自分ももしや予備軍では?」と心配された方もいらっしゃるのではないでしょうか。世の中には(ましてや当社を含むゲーム業界の方々は)暇さえあればゲームをしたいという方々は多いと思いますし、ゲームにはまって睡眠時間が減ってしまった、などというのもそれほど珍しい話ではありません。
 だからといって、そういう人たちが一概にゲーム障害予備軍かというと、それはまた乱暴な話です。

 実際には、ゲーム好きとゲーム障害には大きな差異があります。それが「依存」という症状です。ゲーム障害の依存症状は、ギャンブル等と同じく「行為」に対して依存する「プロセス依存」というカテゴリに分類されます。
 その依存の症状について、端的に特徴づけるのが以下のような状態です。

“Q.依存症ってなに?
A.特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になることです。“

※『依存症についてもっと知りたい方へ』
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html)

 この「やめられない」という状態。そのレベル感は人によって大きく異なりますし、また客観的な判断も難しいため、「ゲーム障害」という状態がいまひとつ伝わりにくいのではないでしょうか。
 この二者を区別するうえで、わかりやすい説明を見つけたので、以下に引用します。

“精神に作用する化学物質の摂取や、快感・高揚感を伴う行為を繰り返し行った結果、さらに刺激を求める抑えがたい渇望が起こり、その刺激を追及する行為が第一優先となり、刺激がないと精神的・身体的に不快な症状を引き起こす状態”

※『依存症予防教育に関する調査研究報告書(1)』3ページ目
(http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1387816.htm)

 特に重要なのが「刺激がないと精神的・身体的に不快な症状を引き起こす状態」という部分です。
 つまり、ゲームが楽しくてやめ時を失っているのではなく、ゲームをしていない状態が不快で耐えがたく、ゲームをし続けせざるをえない状態となり、それが「やめられない」=「依存」ということになるわけです。
 また、自分自身がやめられない状態に陥っていることを自覚できなくなっているケースが多々あるのも、厄介な点だといえるでしょう。

「依存」は意志の問題ではない

 ゲーム障害に限らず、この手の依存症についてよく言われるのが、結局は意志の弱さのせいだ、という誤った認識です。
 確かに、入り口にはそういう要素が介在していた可能性もありますが、依存症に陥った脳は明確に、それこそ物質的に変異します。これは意志や精神とは別次元の話です。

“ギャンブル等を行ったり、依存物質を摂取したりすることにより、脳内でドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンが脳内に放出されることで中枢神経が興奮して快感・多幸感が得られます。この感覚を脳が「報酬(ごほうび)」と認識すると、その報酬(ごほうび)を求める回路が脳内にできあがります。
しかし、その行為が繰り返されると次第に「報酬(ごほうび)」回路の機能が低下していき、「快感・喜び」を感じにくくなります。そのため、以前と同じ快感を得ようとして、依存物質の使用量が増えたり、行動がエスカレートしたりしていきます。また、脳の思考や創造性を担う部位(前頭前野)の機能が低下し、自分の意思でコントロールすることが困難になります“

※『依存症対策指導資料』5ページ目
(http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1415166.htm)

 以上がプロセス依存の仕組みです。本来であればこの「ドーパミン=ごほうび」は、我々の行動を動機づけるうえで非常に重要な働きをします。しかし、その有用なはずのドーパミンと中枢神経のバランスが崩れると、諸々の不都合な症状が表れ、そのうちの一つが依存症ということになります。
 もちろん、複雑怪奇でまだまだ研究途上にある脳科学分野の話ですから、そのすべてがドーパミンの働きで説明できるわけではありません。しかしながら、「好き」と「依存」は似て非なる状態であること、そして「依存」というのは必ずしも気持ちの問題ではないということを理解しておく必要があるでしょう。

おしまいに

 いかがでしたでしょうか。「ゲーム障害」という言葉が、実はかなり重い症状を表していることがわかりました。
 また、ゲームを楽しむことが即ゲーム障害を引き起こすわけではなく、百歩譲って仕事や学業を疎かにしてまでゲームで遊んでばかりいる人であっても、その人が即、ゲーム障害となるわけではないのです。
 とはいえ、そういう状況はあまり褒められることではありませんし、さらにゲーム障害についての研究や議論が進み、安心してゲームを楽しめる環境作りは必要でしょう。ゲームを楽しめるのも、健康な体と精神、生活があってこそ。まずは節度あるプレイをこころがけ、より豊かなゲームライフを送りたいものです。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です