釣りゲーム今昔 5分でわかる釣りゲームの歴史といま

業界裏話,思わずシェアしたくなる話
2019.07.09

 実際には経験できないことを疑似的に体験できるというのは、コンピュータゲームの大きな魅力のひとつ。とりわけスポーツゲームは、コンピュータゲームが生まれた当初からの人気ジャンルです。
 ゲームには流行り廃りがあり、スポーツゲームにおいても現実のスポーツの流行を受ける面はありますが、基本的にはほぼ安定してファンを掴んでいる鉄板のジャンルといえるでしょう。

 そんなスポーツゲームの中で、実は最近元気がないなと感じるジャンルがあります。
 それが“釣りゲーム”です。
 かつて名作を数多く生み出したこのジャンルですが、ここ数年、年間のトピックスとして取り上げられるようなタイトルは生まれていません。それはなぜなのでしょうか。
 今回は、そんな釣りゲームの現状に迫り、そして今後の釣りゲームの展望について、推察していこうと思います。

釣りゲームの魅力

 釣りゲームの魅力はいろいろありますが、第一はやはりその手軽さ。実際に釣りをしようとすると、道具は必要ですし、釣り場にも移動しなければなりません。かさばる釣り具や移動、釣った魚の持ち帰りなどを考えると、やはり自動車もあると便利。しかも大抵の魚が活発に活動するのは早朝か夕方なので、早朝からの移動や現地に宿泊する必要にも迫られるケースもあるかもしれません。その上、海に出れば船酔いに襲われ、川や湖であれば虫などの邪魔にも耐えねばなりません。
 それらの手間や悩みを一挙に解決してくれるのが釣りゲームです。ゲームであれば道具の準備は不要ですし、起動した瞬間すでに釣り場です。自分は一歩も動くことなく、フィールドを自由に動き回り、作品によってはボートだって操縦できるでしょう。ポイントを求めて美しいフィールドをうろうろする、ただそれだけでも楽しいものです。

 何より、ゲームの魚は「釣れる」のです。コンピュータゲームですから必ず攻略する方法が存在しています。「ボウズも釣りのうち」といいますが、釣れるのと釣れないのとでは、やはり釣れるに越したことはありません。ゲームであれば釣りの一番美味しいところだけを、いまその瞬間に味わうことができるのです。

 もちろん現実の苦労を重ねたからこそ味わえる達成感や、その土地ならではの空気、釣り上げた魚の味など、絶対にゲームでは再現できないリアルの強みはあります。しかしそれを差し引いても、釣りゲームによって、その楽しみに目覚めた釣り人は少なくないのではないでしょうか。

釣りと釣りゲームの実態

 さてそんな楽しい釣りゲームですが、まずは現状の確認ということで、2014年から2018年まで直近5年分の国内セールスを見てみましょう。
 ※参照:ゲームソフト年間売上 – Game Compass

 各年の売り上げTOP100に釣りゲームのタイトルは残念ながらゼロです。去年の数字で100位が2.7万本ですから、もしランク外にタイトルがあったとしても、盛況とは言い難い数字です。
 では昨今、なぜ釣りゲームに元気がないのでしょうか。釣りゲームのユーザーの多くが、リアルな釣りにも興味はあるだろうという前提のもと、ここ最近の日本の釣り熱を探るべく、市場規模と釣り人口の推移のデータにあたってみました。
 ※参照:釣り人口/市場規模トレンド

 2000年前後をピークに、綺麗な右肩下がりです。なるほど、釣り自体の熱が下がっているために、釣りゲームも同じ運命をたどっているといえます。いきなりですが、原因の本命にぶち当たってしまったかもしれません。
 しかしながら、釣り人口が減ったとはいえ、2017年時点で640万人。2019年の今、さらに減っているとしても600万人という人が釣りを楽しんでいることも事実。
 そしてもうひとつ重要なデータがあるのですが、総務省の発表している統計によると、釣りの行動者率(10歳以上人口に占める過去1年間に該当する種類の活動を行った人の割合)は、平成28年の調査において野球やゴルフ、サッカーを抑え、全スポーツのうち7位に位置しているのです。
 ※参照:統計からみた我が国のスポーツ−「体育の日」にちなんで−(社会生活基本調査の結果から)

 先ほどはゲームに比べて実際の釣りがいかに手間がかかるかお話ししましたが、それでも一人で楽しめる釣りは、対戦相手などを必要とする野球やサッカーといったスポーツに比べると、意外に裾野が広く、ハードルは低いのかもしれません。

釣りゲーム全盛期から衰退まで

 では釣りの全盛期、釣りゲームの全盛期はどうだったか、当時を軽く振り返ってみましょう。
 一概にはいえませんが、釣りゲームの全盛期はだいたい1990年代の半ばから2000年にかけてと思われます。往年の釣りファンの方ならご存じでしょうが、これは日本で釣りが一番盛り上がっていた時期とほぼ一致します。特に当時大流行したのがバスフィッシングでした。キャッチ&リリースの概念が持ち込まれ、釣り自体のゲーム性がクローズアップされた時期です。
 その盛り上がりを端的に示すのが競技者人口で、一説によると2000万人を数えたといわれています。先に述べた2017年の競技者人口が670万人なので、その3倍です。そんなバスフィッシングバブルに後押しされるように、ゲーム業界にも釣りを題材にした多くの名作が生まれました。
 しかしながら流行というのは足が早く、釣りブームは2000年を境に一気にその熱を失っていきます。急速な流行拡大によるインフラの不整備や、釣りマナーの低下、違法放流による生態系の破壊等々、悪材料となる報道がどんどん出てきたのもマイナス要因でした。
 釣りゲームもその影響からは逃れられず、この時期から全体として低迷していきます。また、システム的にある程度まで完成されてしまい、目新しい作品が生まれにくくなったことも原因のひとつと言えるかもしれません。

シミュレーターからゲームへ

 続いて釣りゲームに訪れたのはミニゲーム化の波でした。ゲームの中に組み込まれるオマケややり込み要素的な位置づけです。そしてこれが、釣りゲームにとっての一つの転換期だったのではないかと思います。
 従来的な釣りゲームは、いわばシミュレーターでした。魚の習性を読んでポイントを定め、適切な道具を選択し、リアルに再現された魚の挙動や竿や糸の微妙な反応から駆け引きをする、それが目指すゴールはあくまで「現実の釣り」でした。
 一方でミニゲームの釣りは、必ずしもリアルを追求しません。あくまでオマケ的位置づけなので、そこまで作り込む必要はありませんし、対象とするユーザーも釣りを楽しみたくてそのゲームを買っているわけではありません。したがって本格的な釣りゲームはそれほど望まれていなかったと想像できます。
 では釣りに興味のないユーザーに、ミニゲームとしての釣りゲームを楽しんでもらうにはどうするか。これは釣りゲームにかぎらず、ミニゲーム全般にいえるのでしょうが、その題材を極端にデフォルメした味付けが行われました。リアルなシミュレーターではなく、本編の息抜き、気分転換としての釣りゲームです。
 結果、架空の巨大魚や派手なエフェクト、本来の釣りとは(良い意味で)かけ離れたゲーム性にシフトしていきました。いわば釣りゲームは、ミニゲーム化によってシミュレーターからの脱却を果たしたのです。リアルさを失ったからこそ、ようやく釣りゲームは「ゲーム」として確立できたといえるかもしれません。

そしてモバイルゲーム市場へ

 そんな流れの中で、釣りゲームにとって追い風が吹きました。携帯アプリというジャンルの勃興です。携帯アプリ市場ではフィーチャーフォン時代から今日に至るまで、数多くの釣りゲームがリリースされています。
 中でも象徴的なのが『釣り★スタ』でしょう。2007年に「世界初のモバイルソーシャルゲーム」と銘打たれGREEでサービスが開始された『釣り★スタ』は、日経新聞でも「その後のSNSの流れを決定づけた」(『カネを生むソーシャルゲームの功罪:日本経済新聞』)と扱われるほどの大ヒットを記録し、GREE躍進の強力な礎となりました。その後も2011年のスマートフォン版をリリース、12周年を迎える今年1月にはNintendo Switch版をリリースするなど、今なお安定した人気を誇っています。
 この『釣り★スタ』のゲームシステムに見て取れるのが、まさに先述の「ゲーム化」です。実際の釣りにとらわれない操作性や釣竿に特殊能力を付与したり進化させたり、他作品とコラボしたりというのは、従来のシミュレーション的釣りゲームにはなかった発想でした。

ゲームセンターの釣りゲーム

 釣りゲームの「ゲーム化」は携帯ゲームにとどまらず、意外なところでも独自の進化を遂げています。それが2012年に当時のバンダイナムコゲームスからリリースされたアーケードゲーム『釣りスピリッツ』です。
 過去、ゲームセンターで釣りを題材にしたゲームはいくつもありましたが、それらと本作が一線を画するのはなんといってもインターフェースです。竿を模したコントローラーで目の前に泳ぐ魚めがけて仕掛けを投げる感覚は釣り堀のそれに近く、一方でターゲットの魚や派手なエフェクトはこれでもかというくらいにゲーム化されています。
 遊びの動作的には釣りらしさをシミュレートしつつも、ゲーム的な設定・演出を盛り込めたのは、ハードウェアとして自由度の高いアーケードゲームならではだったといえるでしょう。

おわりに

 近年、釣りゲームに元気がないと冒頭で述べました。確かに家庭用ゲーム、コンシューマーゲームとして注目されることは減りましたが、舞台をモバイルゲームに移したことで、釣りゲームはシミュレーター的なリアルさから解き放たれ、見事に「ゲーム化」していたようです。
 現在ではモバイル向けにたくさんの釣りゲームを見つけることができますし、もちろんコンシューマーゲームでも定期的にリリースはされています。かつてのようリアル性を追求したタイプも逆に増えてきていますし、流行が一周して、釣りファンの幅広いニーズに対応しているという状況ではないでしょうか。
 この先、釣りゲームがさらにどのように進化していくのか、釣りゲームのイチファンとしても、ぜひ注目していきたいと思います。

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