書籍の制作において、「装丁」は本の顔というべき重要なポイントです。読者の皆さんのなかには、見た目がかっこよかったりかわいかったり、あるいは店頭ですごく目を引いたというだけで、その本がほしくなったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当社では、攻略本や画集、ファンブック、パンフレットなど、さまざまなゲーム関連書籍を作っていますが、では実際の制作に携わるデザイナーはどういうことを考えて制作しているのでしょうか?
そこで今回はQ&A形式で、当社デザイナーにいろいろと本の装丁について聞いてみました。
A まず、装丁と一口にいっても、それは何の本なのかという大前提があります。
たとえば、ゲームの特装版につく限定冊子なら、何年も保存しておきたくなるような豪華な装丁にするということもありますし、コンビニや店頭に並ぶムック本なら、軽い紙を使って気楽にめくりやすい冊子にするということもあります。
クライアントの要望を聞いて、その冊子がどういった形で販売もしくは頒布されるのか、読者はどういった人々が想定されるのかといった情報をもとに、それに最もふさわしい形に落とし込んでいくことになります。
A ゲーム関係の本にかぎったことではないのですが、どういうデザインにするのか、“コンセプト”をしっかり固めることです。
また、ゲームとはやはりエンターテインメントですから、「楽しく読んでもらえるように」ということを心掛けています。
A 意識しているのは、作品の世界観とキャラクターを大事にすることです。
少年向けの冒険心溢れるロールプレイングゲームなら、それに相応しい世界観のモチーフや色を使います。たとえばその作品で海が重要な意味を持っているなら海を、空が重要なら空をデザインに採り入れるといったこともあります。
キャラクターの扱いは特に重要です。ただ主要キャラクターを並べるというだけでも、たとえば主人公を真ん中にして、ヒロインをその横に配置するなど、一目見てキャラクターたちのいろいろな情報が伝わるよう工夫しています。
髪型や手に持っている武器など、そのキャラクターのイメージを伝える重要な部分が、ほかのキャラクターの後ろに重なって隠れないようにするなど、気をつけるべきポイントはいろいろとあります。
A イラスト集などはファンの方の見る目が厳しいですから、より気を遣います。たとえばゲームの色を忠実に表現するために、特色印刷を使うこともあります。
ゲームのデータは3原色、つまりRGB=R(レッド)/G(グリーン)/B(ブルー)という方式で表現されるのですが、印刷ではCMYK=C(シ アン)/M(マゼンタ) /Y(イエロー)/K(ブラック)という4成分で表現します。このとき、RGBではきれいに表現できた色が、CMYKでは色が暗く沈みがちになることがあるのです。そこで色の再現性を高めるために、特別なインクを使用した「特色印刷」を行うのです。
そのほか特別なインクとして金や銀の特色を使用するといったこともあります。
A 豪華な装丁が求められる冊子では、本に特殊な加工を施すことはよくあります。いくつか代用的なものを紹介しましょう。
●PP加工
これは本の表面に透明な薄いフィルムを貼り、光沢感を出したり耐久性を高めたりするための加工です。よりツルツルした光沢感を出すならクリアPP(グロスPPともいいます)、ツヤ消しのしっとりした雰囲気を出すならマットPPを選択することが多いです。
そのほかエンボスPPやホログラムPPを貼るといったことも可能です。エンボスPPは、表面に細かい凸凹模様で柄を表現できる加工です。ホログラムPPは光の当たり方次第で表面の柄がキラキラと輝きます。
●UV厚盛り
表面に部分的に透明樹脂をのせて、ツヤや立体感を出すニス加工です。特に強調したい文字部分やロゴ、デザインを際立たせるために使用されます。厚盛り部分の高さが出るため、手触りにも独特の表現が可能です。
●UVラメ
キラキラした細かい粒子の入ったクリヤーインキを仕様した印刷で、UV厚盛り印刷のような立体感を出することも可能です。まるで紙の表面でクリスタルが輝くような印象を演出できます。
●箔押し
主にタイトルなどを目立たせるために使用される、金や銀などの箔を表面に貼り付ける加工です。よりプレミアムな雰囲気を演出します。箔として使用できる色は、金や銀のほかにもさまざまなものがあり、たとえば黒箔のような重厚な雰囲気を出せる加工を施すことも可能です。
●トランスタバック
フィルムのホログラム柄を転写する加工です。全面加工することも可能ですが、スポット加工でも活躍します。たとえばキャラクターのイラストの衣装やアクセサリー部分だけがキラキラと輝くようにするといったことも可能で、これは実際にあるイベントのパンフレットで行ったことがあり、個人的にも気に入っています。
A ホラーゲームの冊子で、文章などにすべてガサガサしたテスクチャを入れたり、手の指紋をところどころの背景に入れたりしたものが気に入っています。読者の方が「誰の手なんだろう?」と怖がってくださって、反応を見たときはついニヤリとしてしまいました(笑)。
そのほかにも、ブロック状のグラフィックを積み重ねて色々なものを作れるクラフティングゲームで、ゲーム内のブロック素材をたくさん撮影してもらって、紙面上の余白にゲーム内でも実際に作れる建物や景色など、いろいろなものを作ったのも楽しかったです。
ゲーム関連本の装丁は、ゲームというオリジナルの作品ありきですから、その世界観を表現することは非常に重要です。そのゲームに最適な表現、そして表現のための工夫がピタリとハマる瞬間は、作り手にとってもたまらない喜びです。
読者の方に、手に取る喜びを感じていただける書籍を作るため、これからもさまざまな挑戦をしていきたいと思います。
書籍やパンフレット、冊子の制作にお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
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・制作実績 ゲーム関連書籍
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