カナイセイジさんに学ぶ アナログゲームの作り方(前編)

紙のお仕事
2017.04.25

 当社では、毎日さまざまなゲームに関する仕事をしていますが、ゲームの中には“アナログゲーム”と呼ばれるジャンルがあることをご存じでしょうか。

 アナログゲームとは、トランプやスゴロクのようにコンピュータを使わないゲームのことで、非電源ゲームなどと呼ばれることもあります。
 コンピュータゲームに比べると日本での市場はまだまだ小さく、2015年のアナログゲーム市場は151億円。
 デジタルゲームの1兆3591億円に比べると微々たるものですが、2009年に比べると4〜5倍の伸びを示しており、これからさらに成長するのではといわれています。

 実は当社でも、ゲームクリエイターの“カナイセイジ”さんにご協力をいただいて、このアナログゲームの制作を行っています。
 特に『R-rivals』は累計5,000個以上も販売される人気商品です。
 今回はそんなアナログゲームがどうやって作られているのか、その裏側をご紹介します。

制作から販売まで:全体の流れ

 ひと口にアナログゲームといってもその内容は多彩ですが、大きくはトランプのようにカードを使うタイプのカードゲーム、すごろくのように盤上に駒などを置いてプレイするボードゲームに大別できます。

 ここではカードゲームを例にとって説明しますが、あくまで当社の手順ですので、必ずしもすべてのメーカーが同じように制作しているというわけではないので念のため。
 まずは全体の流れをご覧ください。

■ 企画・コンセプトの決定

 まずはゲームの企画です。いきなりですが、早くもここが最大の難所となります。
 企画を立てるうえで大切なのは、どんなゲームにするのかというゲームの内容はもちろんなのですが、商品としてどのようなコンセプトを持たせるかということです。

 例えば……
 
 ・「忍者」をモチーフにして、海外での販売に重点を置こう!
 ・ゲームメーカーとコラボしてよりキャラクター性を活かしたゲームを作ろう!

 という具合です。単にゲームシステムがおもしろいだけではなく、そのゲームがおもしろそうと思ってもらえるきっかけを何にするか。ここが重要です。

 今では世界有数のゲームメーカーである任天堂株式会社ですが、その昔は(今でもですが)トランプを作っていたことをご存知でしょうか。このトランプ事業を大きく飛躍させたのが「ディズニートランプ」だったことはよく知られています。当時としては画期的なアイディアで(もちろんディズニーというだけではなく総合的な戦略がありましたが)、賭け事のイメージがまだ強かったトランプにディズニーキャラクターを組み合わせることで、トランプは瞬く間に家庭で遊べるゲームとしての地位を獲得していったのです。それは任天堂のイメージをも変えていったといわれています。

 これは極端な例ですが、要はしっかりしたコンセプトがあれば、既存のゲームですら新しい魅力をもつことができるというお手本でしょう。

 さて、企画が固まれば、仮の仕様をまとめて試算や部数予測なども作ったりするのですが、あくまで参考にしかなりません。実際作り始めるといろいろな部分が変更されていくため、本体の価格やカードの枚数などが変わってしまうことも珍しくありません。それでも過去の制作物の結果からある程度の予測を立てることは非常に重要です。企画と合わせてより精度の高い試算を出すことは、のちのちの進行をスムーズにする大きな助けとなることも多いです。

 ちなみに、コラボ商品などの制作を行う場合、企画・コンセプトの決定に大きく関わってくるのが、キャラクターのライセンスアウトに関する許諾申請です。
 ライセンスアウトによるギャランティはメーカーによってさまざまで、その折々で契約も必要となります。メーカーとギャランティに関する交渉を行い、契約を結んだうえではじめて次のステップに進むことができます。許諾がおりなければ制作もできません。

■ 大まかなルールの決定

 次はゲームのシステムの設計を行います。
 具体的には……

 ・何人対戦のゲームにするのか
 ・勝利条件はなにか
 ・どんな種類のカードがあるのか

 などを考えます。
 ここから先はゲームクリエイターの仕事です。専門的な考え方が必要になる……ということで、当社ではこの段階からにゲームクリエイターの「カナイセイジ」さんにご協力をいただいています。


カナイセイジさん プロフィール
日本を代表するゲームデザイナー。
「日本ボードゲーム大賞2012」において「ラブレター」で大賞を受賞。
その後、海外での評価も高まり、「ラブレター」を始め、「成敗」、「イカサマージ」など数多くの作品が海外向けにもアレンジされ販売されている。
2014年エッセンシュピールにてドイツゲーム賞4位入賞を果たす。

■ テストプレイ〜ルールの調整

 ここでは趣を変えて、カナイセイジさんとの対談形式で紹介してみましょう。

Qbist(以下Q)「やってまいりました。第1回テストプレイのお時間です。この時間は、解説役としてカナイセイジさんにお越しいただきました。カナイさん、よろしくお願い致します」
カナイセイジさん(以下カ)「よろしくお願いします」
 「最初のテストプレイは、どのように行うのでしょうか?」
 「上にある写真のように、カード型に切り取った紙にパラメータなどを書いて、実際にゲームをしてみます」
 「なるほど」
 「自分やテストプレイヤーがどう感じたかを確認しながら、バランスを調整していきます。場の感想があまりよろしくないときは、いったん作ったものを破棄して、大幅な転換を図る場合もあります」
 「いったん破棄ですか! それは大変ですね」
 「もちろんそうならないほうが理想ですが、実際に試してみて今ひとつ、というのはよくあることなので、そこからいかに新しい形にするかが勝負どころです」
 「カナイさん、ありがとうございました。それではまた次回、第2回テストプレイで会いましょう。さようなら〜」

カナイセイジさんに聞く! ワンポイントアドバイス

 テストプレイでは、もちろん遊んでいただいたテストプレイヤーの方々から出てくる意見もとても大切ですが、やはり最も重要なのは自分が実際に遊んでみた際の「手触り」だと思っています。
 特に、この時点ではゲームバランスよりも、遊んでみて楽しかったかどうかが気になるところです。
 ゲームバランスは後から数字をいじることで容易に変化できますが、遊んだ際の印象を変えるのはなかなか難しいです(ゲームバランスがあまりに悪くてワンサイドゲームになった、とかですとまた話は別ですが……)。
 ゲーム自体がグダグダでも、一瞬でも真剣勝負ができたと感じたり、プレイを工夫して(カードによるコンボを検討したりして)楽しいと感じたなら脈ありでしょうか。良いと感じた部分を軸に、テストプレイヤーの方々の意見を取捨選択しながら修正していくのが理想だと思います。

 カナイセイジさんの貴重なアドバイスをいただいたところですが、記事が長くなってしまったので今回はとりあえずここまで。
 次回の【カナイセイジさんに学ぶ アナログゲームの作り方(後編)】もご期待ください。

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