色校正の最終手段! 「印刷立ち会い」とは?

2018.08.16

 当社では書籍の制作をしておりますが、編集やデザインだけでなく印刷・製本もまとめて一貫してお請けすることも数多くあります。その際、品質に対して責任を負うことはもちろんなのですが、ときにはさまざまな理由でミスが発生することもあります。
 とりわけ難しいのが印刷・製本の管理で、そのなかでも画集やパンフレットなど、印刷や製本に高いクオリティが求められるものに関しては非常に気を遣います。たとえば写真の色味がうまく再現されていない、なぜかゴミのようなものが印刷されてしまうといったトラブルは印刷段階で発生することも多く、悩みのタネとなります。

 そんな事態を防ぐために行うのが、今回ご説明する「印刷立ち会い」です(会社によっては「 立ち会い印刷」「立ち会い校正」ということもあります)。
 「印刷立ち会い」とは、文字どおり印刷所まで赴き、印刷に立ち会って色味の仕上がりや間違いをチェックすることです。といってもなかなか作業のイメージもわきにくいでしょうから、まずは印刷工程そのものからみてみましょう。

印刷の工程

 当社と印刷所とのやりとりは通常、以下のような流れで行われます。
※以下は当社の一例で、印刷所等によって工程は異なることがあります。

① 打合せ、見積り……仕様やスケジュールを担当者と打合せ、見積りを依頼します。
② 正式発注……見積りがあがって問題なければ発注をかけます。実際はここで何度かすり合わせが発生します。
③ 入稿……②以降は編集やデザイン作業ですがここでは割愛。できあがった入稿データを印刷所に入稿します。
④ 色校正……印刷に入る前に、実際の仕上がりがどのようになるか、見本となる校正紙を出してもらってチェックを行います。
⑤ 校了……校正が完了すれば校了となり、印刷に入ります。
⑥ 製版、印刷……まず製版フィルムを作り、それをもとに印刷が行われます。
⑦ 製本……印刷物の仕様にあわせて、加工や製本を行います。
⑧ 検品……できあがった現物の確認です。通常は印刷所で行います。
⑨ 納品

 ごらんのように通常は「印刷立ち会い」という工程は含まれません。基本的には④色校正の段階で、すべての修正が済んでいるのが理想です。しかし、実際には印刷する機械が異なるなど、色校正の印刷は本印刷とまったく同じ条件で行うわけではありません。
 そこで、より確実にチェックしたい、絶対にクオリティを下げたくないという場合、⑥のタイミングで印刷所へ出向き、実際に印刷されたばかりのものでチェックすることになります。このタイミングを越えてしまうと当然ながら修正は効かず、最悪の場合、刷り直しになってしまいますので、「印刷立ち会い」はまさに校正の最終手段といえるでしょう。

「印刷立ち会い」のメリット・デメリット

  最大のメリットはもちろんクオリティの確保。最後まで自分の目で確かめることができるという安心感です。しかし、それ以外にも印刷の現場を見ることで、デザイナーや編集者が印刷環境を理解する一助にもなりますし、双方の信頼感が高まるケースもあります。
 印刷所によっては空いている時間で工場見学をさせてくれるところもあるので、こういう機会はぜひ利用したいものです。

 ただ、一方では非常に時間をとられる作業でもあり、微妙な色味にこだわりすぎると際限がなくなるのも事実。大手の印刷工場ともなると規模と立地の関係で、かなり遠方にあることも多く、移動時間も含めると相当な時間をとられることになります。
 それらは結局コストに跳ね返ってくる部分ですし、スケジュールを押すことにもなりかねないので、印刷物の用途や性質も考慮して判断する必要があります。

立ち会い印刷でチェックすること

 何をチェックするのかというポイント自体は色校正と変わりありません。色校正紙で確認したとおり色が美しく出ているか、版ズレが起きていないか、版にゴミが付いていないかなどを確認します。
 その日の湿度や温度、インクの状態などによって、たとえば青色が強く出過ぎてしまうといったようなことがあれば、その場で色味を調整します。また、印刷の際は文字や画像を「版」にして、それをインクで紙に転写するわけですが、この版に軽微なゴミが付着することが時々あります。
 印刷立ち会いでは、そういった完全にはなくしきることが難しいエラーを、最終的な段階で、人の目で確認し、より完全に排除することを目指しています。

 ちなみに印刷工程だけでなく、製本工程でも同じく立ち会いを行うことがあります。こちらも通常は印刷所側での確認ですが、特殊な製本や断裁の処理を行う場合、台割や指示書どおりの仕様に仕上がっているかどうかを確認します。

 さらに、究極のチェック手段として、全品検品を行うこともあります。これは文字どおり完成した印刷物すべてに目を通し、不備がある状態の本が納品されることがないよう検査していく作業です。
 かなりの大がかりな作業となるため、スケジュールの確保や作業者の手配が必要ですし、どこまでが良品でありどこからが不良品となるのかといった検品作業に対する基準作り、作業者への周知なども重要となります。
 通常の書籍でここまでやることは滅多にありませんが、高価なもの、製本などが特殊なものについては必須の場合もあります。

おしまいに

 以上のような工程を経て、品質管理の基準をすべてクリアした本だけが、最終的に納品されます。
 お客様の求めるクオリティを満たすことは当然ですが、どれだけ万全を期しても思わぬところで落とし穴が待ち受けていたりするものです。とはいえ立ち会いでの検査は納期やコストに影響するので、印刷物の性質を考慮して、あらかじめお客様とすり合わせのうえ事前に組み込んでおくことが大切です。
 皆さんのお手元に美しい本や製品をお届けするため、当社も印刷所も日々、努力の毎日です。

■関連リンク

・QBISTのマニュアル/パッケージ制作
https://www.qbist.co.jp/service/promotion.html#manual

・QBISTの書籍制作
https://www.qbist.co.jp/service/products.html#book

関連記事