攻略本ができるまで〜制作の裏側お話しします

紙のお仕事
2017.04.07

 ゲームの本といえば、あなたは何を最初に思い浮かべるでしょうか?……ガイドブックに設定資料集、イラスト集、マンガ化やノベライズなどなど、人によって連想するものはさまざまでしょうが、おそらくもっとも多い答えが「攻略本」ではないかと思います。
 攻略本が大人気だった1980代後半は、それこそベストセラーリストがゲーム攻略本で埋め尽くされることもあるほどで、ミリオンセラーも珍しくはありませんでした。出版社にとって、攻略本は非常に魅力的な商品だったわけです。
 
 現在のようなインターネットでの攻略サイトもない時代、攻略本はゲームユーザーにとって重要な情報源でした。
 また、ゲームメーカーにとっても攻略本は大きなメリットがありました。許諾によるロイヤリティ収入という面もありますが、攻略本の存在はゲームの宣伝の一環としても有効だったのです。
 単に困ったときのお助け手段にとどまらず、どう遊べばより楽しめるのか、ゲームのポイントやプレイの指針をユーザーに伝えることで、そのゲームの魅力をより知らしめる。つまり「そのゲームをもっと遊んでもらう」ことを目的とした本、それが攻略本なのです。
 
 そんな攻略本ですが、基本的には出版社が発行しています。現在では出版部門をもつゲームメーカーもありますが、当時は出版社がゲームメーカーから出版の許諾を得て制作・発売することが一般的でした。
 ただし、実際に本を制作するのは、出版社から依頼された編集プロダクションや制作会社ということも少なくありませんでした。もちろん出版社が自社で制作することもありますが、ゲームに特化したプロダクション等に任せたほうが効率もよく、一時期は非常に多くの攻略本専門のプロダクションが存在しました。
 ときにはゲームメーカーが出版社に「攻略本を出してほしい」とリクエストすることもありましたし、あるいは制作会社が出版社やメーカーに企画を持ち込むということもありました。
 
 当社でも多くの攻略本を制作してきましたが、他の制作会社と少し異なるのは、出版社から請け負って制作することもあれば、自社で直接出版することもあるという点でしょう。さまざまな立場でゲームに関わることで、独自のノウハウを積み重ねています。
 今回はそんな攻略本にスポットをあて、簡単ではありますが「攻略本ができるまで」の流れをご紹介したいと思います。
 ちなみに会社によって攻略本制作の工程も違いがあります(これもいろいろな出版社さんとおつきあいした結果わかったことです)。今回の話はあくまで“当社の場合”ということでご了承ください。
 
 

  • ①まずは企画を考える

 期待の大作ゲームが、○年×月頃に発売! ……というところから、攻略本の作成はスタートします。現在では攻略本は、主にコンシューマの大作ゲームについて制作されています。
 ひとくちに「攻略本」と言っても、ゲームの発売日に合わせて同時発売する攻略本、すべてのデータや攻略情報などの網羅した完全攻略本、設定資料集を兼ねた攻略本など、内容にはさまざまなものがあります。どういった本にするかきちんと話し合って、目指すゴールをゲーム会社・出版社・制作会社で共有しておくことがきわめて重要になります。
 攻略本のページ数は、200ページ程度のものから1000ページ近いものまでまちまちですが、おしなべて分厚い書籍となることが多いです。本の発売日、ページ数、盛り込む内容、どういった人々を読者として想定しているかなどが決まっていないと、具体的なスケジュールを決めたり、制作する人員を確保したりすることが立ち行かなくなってしまいます。
 
 また、作ってしまったあとで内容がNGとなって、すべて作り直しになってしまっては目も当てられません。お金も時間も労力も有効に使って、充実した本を作らなくてはいけませんから、ゲーム会社はどんな攻略本を作ってほしいと思っているか、ユーザーはどんな攻略本を求めているかを擦り合わせておくのは、最も重要なことといってもいいのです。
 
 

②ゲームをプレイする

 この作品の攻略本を作ることが決まった! となったら、まずはゲームをプレイしなければ始まりません。ゲーム会社に、発売前のゲームのROMを借りて、実際にゲームをプレイしながら、必要となる要素を洗い出していきます。
 特に、攻略に苦労した点や、効率的な攻略のやり方などを見つけたら、攻略本に積極的に掲載しなければなりません。コラムページのネタや、各ページにどんな情報を配置したらプレイヤーにとって助けとなるか、想定しながらメモを取っていきます。
 このとき、ROMだけでなく、ゲーム会社からゲームの資料を提供してもらうことも少なくありません。それらも参考にして、ゲームのシステムや攻略の大まかな流れ、ゲーム内の物語設定なども確認します。
 なかにはゲーム開発者にしか読み解けないような難解な資料が届くこともありますが、そういった資料の中身を整理しながら、実際にゲーム中で確認や検証をして、初めてプレイするユーザーが見てもわかるような正確な情報に置き換え、攻略本に載せる情報をブラッシュアップしていくわけです。
 現在ではインターネットを通じ、誰かが作った攻略サイトを簡単に見ることもできますが、ゲーム会社から提供された正確な情報を掲載することは、攻略本の強みのひとつでもあります。
 
 

③台割・サムネイル・ラフを作成する

 攻略本に掲載する内容が決まったら、“台割”をもとに担当者を割り振って、ページの大まかな内容を作っていきます。
 ちなみに台割りとはページごとに内容を割り振った目次のようなもので、“サムネイル”は、台割りにそって、どのページにどんな内容を掲載するかを全ページに渡って示した本の設計図と思ってください。
 また、“ラフ”はサムネイルをもとに実際のページがどうなるか、イメージを書きおこした見本のようなものです。たとえば、ロールプレイングゲームのダンジョン攻略であれば、そのダンジョンを攻略するためにどんな情報が必要かを考え、ページ案を作り上げます。
 ここで必要な要素をページにいかに盛り込むかが、編集者の腕の見せどころです。ゲームソフトに含まれるすべての情報をそのまま誌面にすべて掲載するのは物理的に不可能ですので、いかに必要な情報を取捨選択し、いかにわかりやすく見せるか、ここが勝負どころとなるのです。
 こういう仕事をしていてありがちなのが、あまりにゲームが上手すぎると必要な情報が取捨選択されすぎてしまうこと。その結果、初心者にはよくわからない本になったりしますから要注意です。読者を想定し、その目線にあった攻略情報を盛り込むことが大切です。
 
 ときには攻略情報以外に、企画ページを設けることもあります。
 書き下ろしのショートストーリーやイラスト、出演声優による対談、制作プロデューサーインタビューなどここでしか見られない内容を盛り込みたい場合は、外部の方の協力が必要になりますから、速やかに打診しなければなりません。
 したがって実際には他のどのページよりも早く、企画の段階で打診を行っておくことが必要となります。このページはとりあえず仮に企画ページとしておいて内容は追々決めていこう、などと考えていると、あっという間に時間が足りなくなって実現が難しくなるのはよくある話です。
 
 

④原稿を書く

 ラフができあがったら、それに盛り込んだ内容にあわせ、実際に文章を書いたり、プレイ画面を撮影したりして、ページを構築していきます。
 原稿の内容は、読者がその通りにプレイしてみてうまくいかなかった、といったようなことがあっては大問題ですから、ゲームプレイで確認した間違いないものを書くことは鉄則です。
 また、本によって初心者向け、熟練者向けといった性格付けをすることはありますが、実際には何種類もの攻略本が出ることはそれほど多くありません。読者にしてみれば、初心者向けであろうが中級ユーザー向けであろうが、その本を買うしかない状況もあるわけです。
 ですから本の性格付けはあっても、制作スタッフとしては可能なかぎり初心者にも熟練者にも満足してもらえる内容を心がけています。たとえば「コンボ」や「クリティカル」といったようなゲームに慣れ親しんだユーザーなら説明不要の言葉でも、ゲームに詳しくない読者にも伝わるか、つねに意識するようにしています。
 
 

⑤画面写真を撮影する

 ゲームによって違いはありますが、今も昔も撮影は苦労する部分です。技を出している場面やボスモンスターとの戦闘画面の画像など、ゲームプレイと並行して進める必要があるからです。
 現在ではセーブデータを複数記録でき、撮影機材やソフトも充実して撮影が容易にはなりましたが、それでもイベントシーンなど、撮影するまでに条件をクリアする必要がある場合も多いため、時間のかかる作業には違いありません。
 
 ちなみにステージマップなど特殊な画像が必要な場合は、デザイナーなどに発注することもあります。ゲームメーカーのほうで準備していただける場合もありますが、制作会社の側で作成することも多く、これがけっこう大変です。
 1980年代の後半、『スーパーマリオブラザーズ』など横スクロールアクションゲーム全盛の時代では、主人公キャラクターを一画面分進めて撮影し、また一画面分進めて撮影し、そうして撮影した画像をすべてつなげて大きなマップを完成させるという、気の遠くなるような作業を行っていました。
 
 

⑥初校を出し、校正をする

 こうしてできた原稿や写真は、最終的にデザイナーがとりまとめてページを組み立てていきます(デザイナーの苦労もまた並々ならぬものがあるのですが、それはまた別の機会に)。
 すべてのページができあがると初校の完成です(初校とは、最初の校正刷りのことです)。でもこの段階ではまだ本当の完成とはいえません。
 攻略本のような、特に正確さが重要となる書籍では、本番の印刷に入る前に必ず校正のための試し刷りを行います。制作会社や出版社、ゲームメーカーの関係者全員で本の内容を確認していきます。
 ゲーム内容と原稿の相違がないか、画像や語句におかしいところはないか、ありとあらゆることを確認して修正します。地味なようで、この作業こそ、本の完成度を決定づける重要な部分です。校正作業を外部委託する会社もありますが、ゲーム攻略本という特殊なジャンルのため、当社ではゲームに詳しい校正専門のスタッフを用意し、ほぼ必ず社内で校正を行っています。
 
 

⑦校了・印刷・発売

 これで万全! というものを作り上げたら、印刷会社に入稿します。
 現在では印刷技術、DTPが発達したため、比較的スムーズになりましたが、20年ほど前まではこれが大変な作業でした。今のようにデータでの入稿がなかった時代は、デザイナーが文字の大きさや、線の太さ、使用する色などをすべて指定紙に書いて印刷会社に渡していたのです(これも長くなるのでまた別の機会に)。
 やがて美しく印刷され、製本された本が書店に並び、ゲームを遊んでいる読者の手元に届きます。攻略本を通して、もっともっとユーザーにゲームを楽しんでもらえるはず!

 長くなりましたが、今回は攻略本ができあがるまでの簡単な流れをご説明しました。ご要望と機会があれば、今度はさらに詳しい話をさせてもらえたらと思います。
 一冊の攻略本には、それに関わった人々のさまざまな工夫が盛り込まれています。少しでもわかりやすく、少しでもたくさんの情報を、よりゲームを楽しんでもらうために。これからも当社の挑戦は続いていきます。

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