ゲーム取扱説明書の歴史 第4回〜電子取説の時代〜

紙のお仕事,WEB・デジタルのお仕事,業界裏話
2018.03.06

 ゲーム取扱説明書の歴史を紹介するシリーズもいよいよ今回が最終回。時代もついに21世紀に入りますが、以後の取説は史上最大の劇的変化を迎えることになります。それが電子取説の登場です。
 しかし、まずはこの時期のゲーム機がどのように推移していったのかをおさらいしておきましょう。

任天堂がふたたび盟主の座へ

 2000年に登場した「プレイステーション 2」は据置き型ゲーム機として盤石の時代を築きます。その間、任天堂からは「ニンテンドー ゲームキューブ」、マイクロソフトからは「Xbox」というライバル機も登場しますが、その牙城を崩すには至りませんでした。
 その一方で、携帯型ゲーム機の分野では「ゲームボーイ」シリーズで一人勝ちだった任天堂が、2004年に「ニンテンドーDS」を発売し、同時期にソニー・コンピュータエンタテインメントも「PSP(プレイステーションポータブル)」をぶつけてきます。
 両機ともそれぞれ成功はしましたが、とりわけニンテンドーDSはタッチスクリーンという機能や幅広いソフトを提供することで大成功を収めます。2000年代後半にはついに携帯型の売上が据置き型の売上を逆転するまでになり、ゲーム機は携帯型が当たり前という時代になっていきます。
 こうしてゲーム業界全体が盛り上がるなか、据置き型もハード交代の時期となります。マイクロソフトが先陣を切って2005年に「Xbox 360」、翌2006年にはソニー・コンピュータエンタテインメントが「プレイステーション 3」、任天堂は「Wii」を発売します。ここでユーザーの心を掴んだのが“新しい遊び方を提案する”Wiiでした。任天堂はニンテンドーDSとWiiでふたたびゲーム業界の中心に躍り出たのです。

バーチャルコンソールの電子取説

 このようにゲームはどんどん進化していきますが、ゲーム取説の本格的な電子化にはまだしばらくの時間が必要でした。その先駆けとなったのが、Wiiに登場した「バーチャルコンソール」です。
 バーチャルコンソールとは、かつて発売されていたゲームをインターネットによってダウンロードし、遊ぶことができるサービスです。
 ダウンロード販売ですので当然パッケージ販売とは違い、紙の取説をつけることはできません。そこで任天堂はゲームソフト自体に取説を組み込みました。そして、バーチャルコンソールのプレイ中にHOMEボタンメニューに戻り、そこからモニタ上で取説を表示できるようにしたのです。
 データ容量の問題などから紙取説のような複雑なものはできず、どれも定型のフォーマットでしたが、そもそも初期のテレビゲームは遊び方もシンプルでしたから、取説の役目としては十分でした。

※バーチャルコンソールの取扱説明書は任天堂ホームページのサポート>該当ハードの選択>取扱説明書ダウンロード>バーチャルコンソールで見ることができます。

電子取説の普及

 バーチャルコンソールの例からもおわかりのように、電子取説が本格的に普及するには、ゲームのダウンロード販売が一般化するのを待つ必要がありました。
 実際、いつぐらいから電子取説が増えていったのかは判断が難しいのですが、2011〜2012年ごろがターニングポイントではないかと思われます。ゲーム機種でいえば「ニンテンドー3DS」や「Wii U」、「プレイステーション Vita」などが発売された頃。つまり、それまでの主流だったゲーム機が上位機種へと移行するタイミングで徐々に実装され、それに合わせて電子取説も採用されていくイメージです。

 特にソニー・コンピュータエンタテインメントはプレイステーション 3の発売にあわせてオンラインストア「PlayStation Store」を開設していましたが、2008年にはPSPにも対応し、翌年発売の「プレイステーションポータブル go」にいたってはダウンロードに完全特化した仕様となるなど、よりダウンロード販売を充実させていきます。

 ただし、任天堂はダウンロード販売とは少し異なる理由で電子取説に乗り出していきます。大きくは地球環境への配慮ですが、それ以外にも印刷コストの削減や取説の破損や紛失が解消されるという理由もあったようです。

電子取説の種類

 このように電子取説が普及し始めたわけですが、紙と違ってその形態はさまざまでした。ここでどんな電子取説があるのか、その種類をいくつか紹介しておきましょう。
 なお、電子取説の種類に特に名称はないのですが、説明の必要上、仮称でつけてあります。また、以下に紹介するものがすべてではありません。あくまで当社が独自で調べた範囲ですのでご了承ください。

①ゲーム内の取説/画像系
 紙取説をそのまま画像化し、ゲーム内に組み込んで表示するようにしたものです。ダウンロード販売のために電子取説が必要になるとはいえ、当初はまだまだパッケージ販売中心ですから、まずは先に紙取説を制作し、それを電子取説にも流用したのです。
 紙媒体と電子媒体とでは読むための環境などが違いますから、厳密には紙取説をそのまま電子化するだけでは万全とはいえないのですが、コスト面などから移行期には多く採用されました。

②ゲーム内の取説/オリジナル系
 上と同じくゲーム内の取説なのですが、完全に電子取説として最初から作られているものです。ゲーム機に合わせて最適化されていますので見やすさなどに長けていますが、画像系が紙取説の編集作業の延長で制作できるのに対し、こちらはゲーム開発に準じる環境が必要となりました。
 画像系・オリジナル系の両方に共通するのは、ゲームの一部として組み入れられているので、アクセスが早く安定しているというところです。

③WEBサイトでの取説/HTML系
 ゲーム内には設けず、完全に外部サイトで閲覧するようにした取説です。こちらは普通にWEBサイトとして作られたものですので、インターネット環境さえあれば誰でも閲覧することができます。また、何らかの理由によって取説の修正や更新が必要になった場合でも、ゲーム内の取説と異なり、対応が簡単というメリットがあります。スマホゲームのヘルプなどではこの形がメジャーになった印象があります。
 ただし、パソコンやスマートフォンやゲーム機など、利用者はさまざまな環境で閲覧する可能性があるので、それを考慮しておかないと、使い勝手が悪かったり、表示が見にくくなったりするというリスクもあります。

おしまいに

 四回にわたってお送りした「ゲーム取扱説明書の歴史」、いかがでしたでしょうか。
 近年ではすっかり電子取説がメインになっており、しっかりした紙取説をつけているゲームの方が少数派になっています。最近のゲーム機では任天堂から発売された「Nintendo Switch」がありますが、こちらはゲームソフトどころか本体の取説もついておらず、すべてWEBサイトでの展開です(ゲームソフトについてはメーカーの判断にお任せしているようです)。
 また、ゲームの表現力が進化し、ゲーム内のチュートリアルが充実したことで、取説による詳細な説明の必要がなくなってきた側面もあり、これも一つの大きな流れといえるでしょう。

 ともあれ電子取説にしても紙取説にしても、あるいはチュートリアルにしても、使うのはユーザーやプレイヤーの皆さんです。取説の形態がどう変化しようとも、あくまでお客様の目線にそったわかりやすい取説を、制作する側の一員としては今後も意識していかなければと思います。

■記事一覧:ゲーム取扱説明書の歴史
「ゲーム取扱説明書の歴史 第1回〜黎明期の取説〜」
「ゲーム取扱説明書の歴史 第2回〜ハード戦国時代の取説〜」
「ゲーム取扱説明書の歴史 第3回〜次世代機の時代の取説〜」
「ゲーム取扱説明書の歴史 第4回〜電子取説の時代〜」
 

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